第61章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車最終章 夏油傑
夏油先輩の愚痴を聞けて思わず笑ってしまう。
にやけた顔だけではおさまらず、笑い声が出てしまった。
「すみません。先輩の愚痴、初めて聞くので」
「そうかな?私だって言うよ。…もし近いうちに妊娠して帰ることができたら私と正式にお付き合いしてくれるかい?」
「はいっ。というか、もうそういう関係かと思ったんですけど…」
皆の前で恋人同士だと宣言してくれて、夏油先輩の手をぎゅっと握った。
色んなことをシた後だったけど、恋人として二人きりになれたと喜んでいたのに。
「ちゃんとした告白は帰ってからするよ。この電車の仕組みは媚薬よりも恐ろしいからね。今度はちゃんと私を起こすんだよ」
「…はい。肝に銘じます」
わたしの認識が甘かったせいで車両に閉じ込められ、結果的に直哉くんを悪者にしてしまった。
もう絶対にあんなことにはなりたくない。
夏油先輩以外に触れられたくない。
これ以上、好きな人に傷付いた顔をさせたくない。
「私が体を洗ってあげるよ」
自然に唇同士が触れ合い、制服に指をかけた夏油先輩が静かにつぶやく。
「そこまで病人じゃないですよ?」
「やりたいんだ。洗わせて」
体を洗うまで尽くさなくても…と思った最中、夏油先輩はただ洗ってくれるのではないと察した。