第10章 夏油傑 「おやすみ」
わたしの特技は一度眠りに入ったらなかなか起きないことだ。
(…あれ…?)
薄っすら視界を開いていくと真っ暗な部屋。
やけに湿るように暑いと思ったら、夏の暑さだけが原因ではなかった。
「…ふぅ…、ぅ…」
息苦しそうな寝息。
わたしの胸の谷間で小刻みに呼吸をしている彼氏の傑。
(…ん?これってなんか…)
この呼吸をつい数時間前に聞いた覚えがある。
意識がだんだん覚醒してきて、布団の下でもぞもぞと落ち着かない上下の揺れ。
(えっ?嘘…。やってるの…!?)
寝る前にエッチしたのに、傑はおっぱいをおかずに自慰している。
スーハ―匂いを嗅がれて、心臓の音が激しくなる。
「なまえっ…なまえ…、くっ!」
押し殺しても漏れる声で名前を呼び、果てる。
傑はわたしの胸に顔を埋めたまま乱れた呼吸を整えている。
これで終わりかと思ったら、傑は寝ていることをいいことにおっぱいを揉みだした。
(ちょ!まさか…気付いてる…!?)
手の動きは大胆だった。
パン生地でもこねる手つきで揉みしだいている。