第60章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車最終章 五条悟
「わたしの好きな人は…」
ちらりと五条先輩に目をやるとバチッと静電気が走ったみたいに甘く痺れる。
「っ~…」
顔がとんでもなく熱い。
目が合った五条先輩は気付いていない様子だった。
眉間にシワを寄せていたし、だんだん両想いではないのかと不安になってくる。
わたしの思い違いだったりする?
「…ごっ、ご…ごごご…っ…」
けれども口火を切った以上、好きな人の名前を言わなければという焦りから先頭の文字しか口に出せない。
頭文字の「ご」しか言えず、下手したら「ごめんなさい。やっぱりいませんでした」と受け止められるかもしれないのに言葉が詰まる。
「ごごごって、好きな人が言えない縛りでもかかってんの?」
五条先輩があきれ返った声で指摘してくる。
縛りがあるならそのせいにしたい気もするが、好きな人に向かって告白したり、人前で告げること自体初めてなのだ。
自分の心臓でどうにかなりそうになっていると五条先輩は立ち上がり、わたしの隣にドカッと腰を下ろす。
「この中で“ご”がつくのって俺しかいねぇんだけど、そう考えていーの?」