第59章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-玖-
「…あれ?…」
いつの間にか眠っていたようでだるさは残るものの媚薬に支配されている妙な感覚を失っている。
「起きましたか?」
「…ななみ…くん…?」
ロングシート式の座席から体を起こすと、最初ここで来た時みたいに同じ距離感で七海くんが側にいることに感激する。
「!…どうされましたか?」
嫌われたかと思った。
記憶は途切れ途切れだけど大量の媚薬を飲んで直哉くんに犯され、そのあと夏油先輩、五条先輩、伏黒さんに三両目の浴室でマワされた。
その時、七海くんに遠ざけられた気がしたから側にいてくれたのが嬉しくて涙が溢れてしまう。
「お腹…減りましたか…?」
「うん…。空腹だよぉ…」
そう言うことにしておこう。
現実世界に戻っても七海くんと気まずい関係になんてなりたくない。
「持ってきますね。何か食べたいものは?」
「…あったかくて、やわらかいの…」
「それですと、うどん、お茶漬け、チーズリゾット、シチュー、ワンタンスープでしょうか。麻婆豆腐は刺激が強いですし…」
七海くんの変わらない真面目っぷりに頬が緩んでしまう。