第55章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-伍-
これで何度目だろうか。
恥ずかしさは否めないが抑える気力もなくなり、壮大にきゅるるるとお腹の虫が鳴る。
「…」
「…」
きっと時間的には明日の日付なんだろう。
明日になっても状況が変わらず、先輩達と顔を合わせるのが気まずくて二両目の車両に近付けない。
「っ…あ、あの…」
「ん?」
「えっと…」
伏黒さんもわかってるはずなのに言ってくれない。
あんなものを見せておいて…という反面、トイレに引っ張り込まれただけで、痛いことされたり、抑えつけられたり、何なら鍵も掛けられなかった。
「…あの…、えっと…」
キッカケさえあれば伏黒さんはシてくれる人だ。
そういう認識はできたけど…、できるなら伏黒さんの方から誘ってほしくて中途半端な呼びかけを繰り返してしまう。
「…クク。腹減ってお口まわんねーの?」
「…、はい…」
もう何とでもなれ。
お腹が減って妊娠行為をしてほしいだなんてバカな考えだと思うが、今は伏黒さんの言葉に乗っかる。