第54章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-肆-
明日になれば妊娠してこの電車から降りられるかもしれない。
夏油先輩に身振り手振りで何とか状況を伝えあい、途中からきた五条先輩にもおやすみの挨拶をする。
…問題は明日。
もしこの状況が一ミリも変わっていなかったら鍵となる行動を取らなきゃならない。それがこの電車のルール。
そうならないよう祈りながら車両の電気を消すと真っ暗になってしまい、でも明るいところで眠れないので何とか場所を探して横になる。
… … …
何時間寝ただろうか。
この車両には時計というものがなく時刻がまったくわからない。
「トイレ行こ」
トイレと照明のスイッチは真逆にある。
外の明かりでもあればと思うのだが窓ガラスは真っ暗で何も映さない。
伏黒さんはまだ寝ているかもしれないので感覚だけで進むと小さな明かりを目にする。
「あ。よかった。開閉ボタン光ってる」
人間という生き物は光をみると安心する。
迷わずボタンを押すと先客がいたらしく、伏黒さんが自分の竿を握っていた。
「きゃあああっ!ああっ!いやっ、ホントすみませ…ッ」
ばっちり伏黒さんの下半身を見てしまった。
日々、呪いとの戦いで動体視力を鍛えていたせいか形をハッキリ捉えてしまい、急いでボタンを押すもすぐ開いてしまう。