第51章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-壱-

「誰でも良いってんならジャンケンで決める」

「それは賛同できない」

「あ？俺の言うこといちいちイチャモンつけやがって。他に方法あんのかよ」

「彼女の気持ちが大切なんだ」

どうしよう。
また、わたしのせいで先輩達が揉めてしまう。

自分が何をするべきか明確にわかる。
モタモタするだけ刻一刻と体力が落ちていくだけなのにそれを口にする勇気がない。

こんな場所で、しかもこんな風に誰かと初めてを致すなんて誰も想像してなかった。

「みょうじ…」

自分のすすり声の間から夏油先輩の声が聞こえる。

考えることはそれだけなのに、何も悲しくなんてないのにポタポタと膝の上に滴が落ちる。
ただ妊娠するためにセッ…すればいいのに。

「っ、ご…ひっく、ごめ…んなさぃ…。わ、たし…なんかで…本当に…うぅ、ごめん、なさいぃぃ…」

こんなところでめちゃくちゃになりたくない一方で、ここにいる人達は誰もが犠牲者なのだ。
自分だけが被害者ぶっている考えに涙が出てくる。

「君が謝る必要なんてない。むしろ何もできない私達が責任を取るべきなんだ」

「責任だなんてそんな…。先輩達は仕方なく…やる、しかなくてっ…」