第50章 七海健人 ペアリング
「嘘…っ、でしょ…」
「先ほど押し上げた通り、私は貴女のことが…」
高専に入って、わたしは七海くんに恋をした。
外国人顔で声が渋くてカッコよくて、シビアな対応が通常運転だけれど本当は人思いで優しくて、そんな彼だから惹かれてしまった。
「嘘よ…!三年前告白した時、術師に恋愛は務まりませんってバッサリ切ったじゃない…!」
振られたショックで先輩の硝子さん、歌姫さん、冥さんに泣きついて慰めてもらった。
そこで初めて術師内恋愛は極めて死亡率が高く、常に死亡フラグが立っている状態だと冥さんが教えてくれた。
非術師のようなごく普通の恋愛に憧れるなら術師をやめるのがいい。
でなければ自分の命、もしくは相手の命を天秤にかけてしまうかも…と意味深な顔で言われ、失恋から立ち直って四年間やり切ったのに…
「術師をやめるなんて…そんなの七海くんじゃない」
「…買い被りすぎですよ」
七海くんが静かな声でつぶやく。
「私は術師になる前から恋愛が向かない体質だと感じていました。術師になればよりいっそう無縁になったと思っていましたが…、一人の女性として貴女に魅力を感じてしまった。そんな時貴女に告白され、これ以上気持ちが大きくならぬよう歯止めをかけていましたが芽生えた時点で止められようがなかった。このまま術師として全うするより、貴女と二人で物価の安い国をめぐり歩いて、穏やかに生涯を過ごしたいと考えたんです」
「…ズルいよ、七海くん」