第47章 五条悟&夏油傑 親友の彼女-拾-
朝、縁側から庭に出ると空がいい感じに青く澄み渡っている。
「もうすぐ十年経つな」
「そうだね」
一人でぼんやり空を眺めていたら横に傑の気配がした。
「初めて会った時もさ、こんな晴れの日だったよな。
今よりもずーっと澄んでて青く見えた」
「…どうしたんだ?急に」
僕から思い出を口にすることは少ない。
なんでもかんでも口に出したら色褪せそうな気がして、普段はずっと胸の奥に留めてることが多いけど何となく口にしたかった。
「結婚記念に青いところで写真撮ろうぜ」
「…?私は結婚してないよ?」
「愛人って僕が認めてんだからいいんだよ。沖縄でもハワイでもいい。僕達が出会った日も、なまえと出会った日も、普段はグラサンで隠れてみたりしねぇんだけどさ。空がすっげー青かったんだ」
十年目の区切り。
僕にとってこの十年はこれまで生きてきた人生の中で一番色濃く残っている。
青春もして、恋愛もして、死にかけたりもして…、もしかしたらかけがえのないものを失っていたかもしれない年月でもあって記念に残したいと思った。
「僕達、親友だろ」
「…!ハッ…気持ち悪いこと言うなよ」
「あぁ!?」
思い出したらめっちゃハズイことを口にしていたかもしれない。
傑は照れくさそうに目元を隠す。
…お前の話ちゃんと聞けてよかったよ。
これなら心残りなく最前線で戦える気がする。
ホント心の底からそう思うよ。
込み上げた感情がぐっとなって、頬に粒が伝う。
「あーあ。こんないい天気なのに雨降ってきたな」
「いや…、…そうだね」
<終>