第44章 夏油傑 親友の彼女-漆-
「…」
その瞬間わかった。
バカにされる雰囲気を感じたから揶揄われたくなかったんだ。
気付いたのならこれ以上関わらないでほしい。
九十九は終始ニヤニヤしながら高専を後にし、何となく落ち着かなくて髪を縛った。
「特級の人…?」
「うん。なまえよりもっと任務嫌いな人」
「あー…いたね。そんな人」
以前、気になって他にも特級術師がいるのかと担任に聞いた話をそのままなまえに話したことがあった。
なまえは単独任務が嫌なだけなので、任務そのものが嫌いというわけではないが。
「で、何しに来たの?」
「護衛任務失敗の影響はないってさ。あとは高専と方針が合わなくて嫌いなんだって」
「あ、だからさっき仲良くしようって話してたんだ!」
「そういうことではないんだが…」
あの人の話で非術師を一掃する意味はあった。
意義すらあると思った。
全ての人間から負のエネルギーが出るものだと思っていたし、術師からは呪霊が生まれないなんて基礎的なことは知らなかった。
意味のない非術師を間引きして術師として進化を促す。
もし、そんな道義を外したことを行えばその火種はどこへ飛んでいくのか。
「なまえ。今日も私の部屋でエッチなお泊り会する?」
「どうしよっかなぁ…」
私の選択は間違えていない。
なまえはふらっと迷うように肩に寄りかかってきて、一人でどこにも行ったりしないのに試されている気分になった。
<終>