第5章 夏油傑 所有物の証
「うーん…」
治療してくれた硝子が先ほどからずーっと唸っている。
どうしたの?と聞いても答えてくれない。
それほど今回の怪我は重いのだろうか。
「ひとつ聞きたいんだけどさ」
「うん」
「傑と上手くやれてる?」
何をそんなに悩む必要があったのだろう。
わたしは頭にクエスチョンマークを浮かべながら
「普通だよ」と答える。
「じゃあ質問返るけど
お互いに満足する交尾してる?」
「えっ!?」
「これ重要。下手したら殺されるよ」
「誰に!?」
「彼氏に」
え?どういうこと?
傑が、わたしを、殺す…?
「気を付けなよ。
なまえのフツーとあいつにとっての
フツーは別物なんだから」
そう言って硝子は保健室を後にする。
百人十色。勿論、傑のことも理解しているつもりだ。
硝子がいい加減なことを言うとも思えない。