第36章 七海健人 夫婦交換しよ?-肆-
自分の中で割り切っていても特別視されたい思いがあって、つくづく滑稽な人間だと自覚する。
「少なくとも私にとって
なまえさんと出会えたのは天の祝福だと思っています。
だからそんな辛そうな顔をしないで」
本気にしちゃいけないのはハッキリとわかる。
けれど傷付くよりも、出会えたことに感謝されて嬉し涙が止めどなくあふれた。
「わたしも…健人さんと出会えて良かった…」
「私も心からそう思います。
なまえさんと最高のセックスができて良かった…」
他の誰かと夫婦交換をしてもこれほど満たされないだろう。
健人さんは体の繋がりだけでなく、心でも真剣に向き合ってくれた。
静先輩に不満を漏らしたことからはじまった三泊四日の温泉旅行。
陽の無神経な発言や静先輩の思わぬ行動に傷付けられたこともあったけれど、健人さんに出会えて良かった。
最高のセックスができて良かったと涙する。
「きて…なまえさん。私のペニスをあなたのそのぬくもりで包み込んでください」
「…健人、さん…っ」
これが本当に本当の最後のセックス。
忘れようとしたけれど忘れなくてもいい。
最高の美しい思い出に変えることができると
いまこの瞬間、分かり合えたから。
<終>