第1章 夏油傑 壁際に追い詰めて
「もう逃げられないよ。なまえ」
とうとう壁際まで追い詰められてしまった。
一歩お外に出れば、太陽の光が待っているのに傑の顔は影を落としている。
「まだ何もしてないのに逃げるなんてひどいじゃないか」
「だ…だって…!」
言わずとも傑は怒っている。
表面上はいくら優しい笑みを浮かべていても
ピリついた空気を肌身で感じてしまう。
「なまえは誰の彼女…?」
「傑の…」
「だよね」
そう。わたしは傑の彼女。
生まれて初めてできた大切な恋人。
「それなのに…
どうして他のオスなんかとキスしたの?」
傑を怒らせた自覚はあった。
けれど、キスした相手が理不尽すぎる。
「猫だから…可愛かったの…!」