第23章 夏油傑 浮気
「なまえさん。滅入ってますね」
夜、自販機の前で盛大に溜息をついたら偶然居合わせた学生である夏油くんに聞かれてしまった。
「これってデジャブ…?」
「おそらく。非術師の彼氏さんですか?」
「んー…そう。
前のとは別れたんだけど新しいのがね…」
前にも絶妙なタイミングで現れた。
ついつい聞き上手の夏油くんに色々話すぎてしまい、酒で記憶を飛ばそうとした苦い思い出がよみがえる。
「付き合いますよ」
「酔った女は面倒くさいよ?」
「それ自分で言います?」
夏油くんは人がよさそうな笑みを浮かべる。
大人びた夏油くんはわたしにとっても神々しい存在。
同級生や後輩だったら間違いなく惚れていたであろう。
「わたしだって会いたくても仕事頑張って我慢してるのにっ!性処理なら一人でもできるのにっ!なんで浮気に走るのこんちくしょー!」
缶ビールを一気に飲み干し、また新しいプルタブを開けて浴びるように飲む。
「仲直りセックスだってして…仕事で会えないって断ってたらまた違う女と寝てるし…むにゃむにゃ」
「ひとくちお水飲んでください。少し落ち着きますよ」
夏油くんを部屋に招き入れ、かれこれ同じ愚痴を吐き散らかしている気がする。
冷たい水を喉に流すと少し気分がスッキリする。