第3章 伏黒甚爾 嚙みつくようなキス
「もう帰って来ないで…!」
怒りにまかせて吠えてしまった。
甚爾と離れるなんて考えられないのに
今回はどうしても許せなかった。
許したくなかった。
泣いて後悔するくせに後ろを振り向けない。
「…俺たち…終わりなのか?」
「そうよ。甚爾が裏切ったんだから
元には戻れない」
いつから繋がっていたのかなんて関係ない。
甚爾はわたし以外の女性に触れていた。
なにを言われようと甚爾はわたしを裏切ったのだ。
「そうか…」
こんなにもあっさり終わるとは思わなかった。
つくづく面倒臭い生き物だと反吐が出る。
ガタンと扉が閉まり、
部屋の中が静まり返る。
「あ…あああぁぁ…」
声にならない声が出た。
甚爾はわたしの家から出て行った。
猫のように転がり込んできて、彼の匂いが染みつくまでずっと一緒に暮らしてきたのに終わりを告げる。
こんなに涙が出たのは初めてで止め方がわからない。