第20章 五条悟 脱ぎかけの衣類
「ちんちくりんのために急いで飛んできたのに隠し技持ってるとかありえねーし。あ、先風呂もらうね」
「あ…はい、どうぞ」
ぽいっと上着をソファーの上に投げ捨てる悟先輩。
急いで駆けつけてくれたのに悪いことしちゃったなと思いつつ、脱ぎ捨てられた上着をそっと手にとる。
(どうしていつもイイ匂いなんだろ…)
ふわりと香る悟先輩の匂い。
どこを探したって見つからないドキドキする匂い。
ダメだとわかっているのに鼻を近付け、シャワーを浴びている隙に分析する。
視線を少しずらせば二台並んだベッド。
急きょ同室のホテルに泊まることになったのだが…
(わたしの心臓持つかな…)
きっと心拍数が高いのは悟先輩の匂いを嗅いだせいだ。
嗅いだだけでは分析することは難しく、
名残り惜しくて最後にもう一度鼻を近付けた瞬間。
「何やってんの?」
後ろから声を掛けられ心臓が停止する。
バスローブが短いのか、はたまた悟先輩のスタイルが良すぎるのか長い足が見えている。
「ぁ…あの…その…脱ぎっぱなしだったので」
「ふぅん。
俺には嗅いでいたように見えたけど?」