第8章 夏と恋とひんやり甘味
「いらっしゃいませ。」
私とお手伝いの女子達は元気よく挨拶した。時刻は閉店時間を過ぎていたが、特別にこの日だけお店を開放したのだ。ただし、ご予約の徳川家康様のためにね。
お店の入り口には張り紙もしてあるから問題ないだろう。
そして家康様は家臣の者と一緒に訪れてくださりお店の中を興味津々に見ていた。
「ほほー。天井についてるあれはなんですかな?」
家康様が尋ねたので私は元気よく答えた。
「あれはシーリングファンと言って職人に特注で作らせたものでございます。シーリングファンとは暑さを凌ぐ室内に設置するものでございます。」
私の説明に家康さまは驚きながら感心していた。
そしてお店の作りを私が説明しながら歩く。暫くして満足したのか家康様と家臣は座席に着いて献立表を手に取った。
「ふむふむ。食べ慣れた味から変わり種まで様々ですな。このお店の人気の献立は何になりますかな?」
「はい、塩むすびとシーチキンマヨネーズになります。鰹節のおむすびも人気なんですよ。」
私はにこやかに答えた。
「しーちきんとは何かね?」
「シーチキンとはマグロを加工して作ったものでございます。」
「作り方をぜひ知りたいのぅ。家臣にも作らせたいものじゃ。」
家康様の言葉に頷いた私は作り方の書いた紙を渡した。
「ここにシーチキンの作り方が書いてあります。マヨネーズは油と卵とお酢を混ぜて作るんですよ。卵と言っても使うのは黄色い卵黄のところだけなんです。残った白い部分は白身と言いまして混ぜ合わせてメレンゲというふわふわしたものを作ります。メレンゲはお菓子にぴったりなのでパンケーキに添えると美味しいですよ。」
「なるほどのぉー。では連続献立で塩むすびとしーちきんまよねーずのおむすびを頂きたい。ん?この無限きゅうりとはどんな味なのかね?」
家康様が献立表を指して聞いた。
「無限きゅうりとはきゅうりが嫌いな人でも食べられるように作られた献立にございます。マヨネーズを和えてあるので食べやすいんですよ。味わいはまろやかなんです。」
「ではかるぱっちょも気になるから前菜はかるぱっちょで、おむすびは先ほど言ったもので、汁物は具沢山味噌汁で一品は季節の野菜天ぷらを頼もうかと思う。それで甘味なんじゃが、抹茶のぱんけーきとやらを頂こうかのー。」
「かしこまりました!ただいま、お作りしますね。できるまでお待ちください。」