第8章 夏と恋とひんやり甘味
しばらく日が経って歯ブラシセットがようやく出来上がり、家康様のいる城に向かった。
「曲者は控えろー!」
門番が私を呼び止めたので事情を説明すると通してくれた。
「お待ち道様です。歯ブラシセットにございます。」
私が歯ブラシセットを差し出すと家康様は嬉しそうに受け取ってくれた。
「そういえば、お店の方はいかがかね?繁盛しとると聞いているが。」
「はい、とても繁盛しております。これも家康様が土地を買うのを勧めてくださったからにございます。あの時は誠にありがとうございました。」
家康様の問いに私は正座をして深々と頭を下げた。
「それはなにより。所でお前さんの握ったおむすびを一度食べてみたいと思うのじゃが、構わなければ閉店後に伺わせて頂きたいのぅ。本当は開店してる時に行くのが筋なんじゃろうが、他のお客の邪魔になってはいけないのでな。」
意外にも家康様はそう言ってくださった。
「ありがたいお言葉をありがとうございます。ご迷惑だなんてそんなことありません。いつでも都合のいい日にお尋ねなさってください。いや、それも申し訳ない気持ちでいっぱいです。材料とお米さえ揃えばお城の台所を貸していただき、私がお作りしてもよろしいでしょうか?お店に来て頂いても出来立ては提供できますが、来てもらうだなんて申し訳なくて・・・。」
お言葉は嬉しかったが、それなら私がお城に向かおうと思ったのだ。
「確かに城で作ってもらうこともできるがね。一度、どんなお店か訪ねてみたいんじゃよ。お店の雰囲気も味わいつつおむすびを頂こうと思ってな。いつなら空いているのかね?」
家康様が考えながら言った。
「閉店後でしたらいつでも空いています。閉店時間は午後の七時にございます。また火曜日と日曜日が定休日ですので特別にお店を開けますのでその曜日でもよろしければぜひいらしてください。」
私は笑顔で答えた。
「では、行く前に手紙を書くとしよう。お供も連れて行こうと思っておるでな。いやー実に楽しみじゃ。」
「ありがとうございます。お供の方もぜひ召し上がっていってくださいね。普通の献立もありますが連続献立と言って複数の方と召しあがる献立もありますが、いかがいたしますか?」
「ではお供と共に連続献立を頂くとしよう。」