第8章 夏と恋とひんやり甘味
「気をつけてお帰りー。」
吾郎さんと綾さんが扉を開けて見送ってくれた。私は提灯を手にして歩いて行った。
「夜に出歩くことないからなんか新鮮だなぁ。」
ふとそう思って空を見上げると満天の星空が広がっていた。
「うわぁ、すごい!」
本当なら写真に収めたいくらいだけどこの時代にカメラなんてものはないので諦めて帰宅することにした。
しばらく歩いていると後ろの方でガサガサと音がした。
「ん?」
振り返ると何もない。
「何だろう?動物でも通ったのかな?」
それくらいにしか思わず、また歩き出しているとガサガサと音がした。
「え?二度も何で??」
私が後ろを振り返り首を傾げたが特に異常ないと思いまた前を向いて歩き出した時だった。
「へへへ、お嬢さん!こんな夜道に一人じゃ危険だぜ。俺が送って行ってやろう。」
後ろを振り返ると見知らぬ男性が二人立っていた。
なんかこの人達・・・怖い・・・。
「いえ、お気遣いありがとうございます。でも大丈夫ですから。」
私がやんわりと断ると男達は私の方に詰め寄ってきた。
「そういわずにさぁ。一人じゃ物騒でっせ。」
「そうですね。でも、提灯もありますし帰れ・・・・え?」
私は後ろから男に口を塞がれてしまった。
「動くんじゃねーぞ!」
嘘っ!?何で??誘拐?何これ???
私は体が固まり身動きができず男達に抱えられて籠に入れられてしまった。口には布巾がかけられている。今でいう口封じのガムテープ代わりだろうか?手首も布巾で硬く縛られていた。
怖いよ・・・やっぱり吾郎さんにお願いして又兵衛さんと帰ればよかったかな?でも何でこんなことに・・・・・。
あの時、私が吾郎さんの言うことを聞いておけばよかったんだ・・・
どうしよう・・・・
今どこに向かってるのかもわからずに私は怖くて目を瞑ってしまったが眠気なんてものはなくひたすら恐怖に怯えていた。
ああ〜こんな時に続逸さんがいてくれれば・・・
お願い!助けてと祈ることしかできなかった。