第8章 夏と恋とひんやり甘味
「・・・・。」
暫く沈黙の時が流れた。
このまま沈黙で終わるのかと思っていたが、吾郎さんが話始めた。
「穂乃果さんの話はわかった。でも今は元の時代に戻るつもりないならそげな心配せんでもええんやないの?」
「でも、ふとした時にいきなり元の世界に戻っていたらと思うと怖いんです。そもそも江戸に来たのだって偶然ですし・・・枯葉が舞い散って目をつむっていたんです。気がついたら江戸の草むらにいて吾郎さんと出会った感じなので。」
「なるほどねぇ。穂乃果さんはその武士さんに本当のことを話そうと思うのかい?」
綾さんが聞いてきた。
「できれば言いたくない・・・かな?人の噂ってあっという間に広がるっていうし。せっかくお店がうまく行ってるのになんだかお手伝いの女の子たちのことも裏切ってるんじゃないかと思うようになってきたんです。お役所の人もそうですけど遠くから来たってはぐらかしているので。でも本当のことを話せばややこしくなってしまいます。私がそんな話を武士の方にすれば嫌われてしまうかもしれないし、曲者だと思われて切り捨てられるのかな?ってちょっと怖くて。私のいる時代では刃物の持ち歩きは禁止なんです。ましてや人を刺すなんて滅相もなく法律で禁止されてるんです。・・・・すんなり告白を受け入れられていたらこんな考えも浮かばないし苦労もしないんですけどね。」
「うーん。」
吾郎さんと綾さんが真剣に考えてくれている。嬉しいけれど申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「難しいやっちゃね。でも後々バレるのを考えると今が言う瞬間なのかもしれへんしかといって俺らだけの秘密になってるからなぁ。」
「そうなのよね。穂乃果さんから悩みを聞けて嬉しいんやけどこればかりはね。」
「返事を出すのに期限があと5日なんです。もう後がなくてー。」
私はぽつりと言った。
「うーん。」
私たちは考え込んだ。何か答えを見出せないかな?