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江戸でおむすび屋さん始めました!

第8章 夏と恋とひんやり甘味


それから必死で考えた。そもそも私は江戸の人ではない。吾郎さんといい綾さんといい本当は出会ってはいけない人だったんだ。

でも、一人では考えられない。私は仕事終わりに吾郎さんの家に向かった。
コンコンと扉を叩く。
「夜にすみません。穂乃果です。」
「ほえーこんな時間に穂乃果さんどうしたと?」
吾郎さんが扉を開けて驚いていた。
「迷惑なのは分かってるんですけど相談したいことがありまして。」
私がそういうと二人は入っていいよと言ってくれた。
「なんなら今日、泊まっていけばいいやないの。おなごが夜に外出なんて何が起こるのかわからんし。」
綾さんはそう言ってくれたけど、私は丁寧にお断りした。
「心遣いありがとうございます。でも、そうはいきません。綾さんの大事な時ですし、それに明日もお店を開店しなきゃいけないですからお店に帰った方が準備しやすいので。」
「そうですかー。俺がついて行ってあげられたらええんけど、綾がこの調子なんで置いていくわけにもいかなくてね。すまんねー。けど、お店の前まで送っていけばええんやろ?だったら俺らの向かいの又兵衛にでも頼むから。」
吾郎さんは申し訳なさそうにそう言ってくれた。
「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です。道も慣れておかないと。」
「ならええんやけど。それで相談ってなんや?」
「実は武士の方と手紙交換してる話はしたんですけど、この間・・・大衆食堂で一緒に食べてる時に言われたんです。俺の恋人にならへんかって。本当なら素直に受け入れるべきなんでしょうけど私は前に言った通りにここの人じゃないんです。江戸の人じゃない。令和の人なんです。帰り方さえわかれば元いた時代に戻れるかもしれない。そうなった時に武士の方を置いていくなんて理不尽な気がして。お店はいつでも畳めると思うんですけど・・・いや、今は令和時代に戻るつもりはありません。江戸での生活も楽しいですしお店もやっと軌道に乗ってきたので。もう、どうしたらいいかわからなくて。」
私は気がついたら涙を流していた。二人は頷きながら私の話を聞いてくれた。
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