第5章 だし巻き卵は母の味
私のいた時代で子供人気のメニューといえばハンバーグやナポリタンそれにエビフライなんかが頭に浮かぶ。では江戸っ子はどんな食べ物が好きなんだろう?まずは江戸っ子達にアンケートをとるべく好きな食べ物を書いてねと説明書きをした箱をお店に設置して様子を見た。そして一日だけで数枚の紙が入っていた。
「ふんふん。うちの献立で好きなのを書いてくれた子もいるし普段の食事のことを書いてくれた子もいたのか。なるほどねー。」
江戸っ子の意見も取り入れて子供向けの献立を考えた。皆んなが真剣に書いてくれて嬉しかった。早速、結果をまとめてお手伝いの女子達に報告した。そこから試作品をいくつも作っては試食する日々が続いた。
「よし、これなるいける!」
と確信が持てるまで一ヶ月かかったけれど美味しそうな子供向け献立ができた。
子供向け献立を提供したところ大盛況だった。
そしてお店が賑わっていたある日、吾郎さんと綾さんがうちのお店を久々に訪れてくれた。
「今日はお店はお休みですよってあれ?吾郎さんと綾さんお久しぶりですね。」
久しぶりの再会に私は嬉しかった。そういえば最近、見かけないなと思ったからだ。
「いやー実はお綾の体調が最近すぐれなくてね。」
吾郎さんが嬉し恥ずかしそうにそう言ってるところを見ると何か嬉しい報告に違いないと思った。
「ちょっと!はぐらかさないでちゃんと言いなよ。赤子ができたのよ。最近、お店に顔を出せなくてごめんなさいね。体調がすぐれなくてやっと良くなってきたのよ。」
綾さんも嬉しそうに言ってお腹をさすっていた。
確か妊婦さんってつわりの時期があるんだよね?江戸時代も令和時代もつわりに関しては同じなのかな?と思った。
「ご懐妊おめでとうございます。それじゃあ、栄養のある特別献立を今から作りたいと思いますが、食べられそうなものはありますか?」
せっかくのご報告だし私なりにお祝いしてあげたいと思ったのだ。
「そんなにもてなさなくてもいいのよ。穂乃果さんもお店、大変でしょ?」
「そんなことないですよ。吾郎さんと綾さんには随分お世話になりました。」
私は笑顔で答えた。
「あっ、そうだ。穂乃果さん!穂乃果さんがうちに来てた時に着てた服なんだけどどうする?」
すっかり忘れていたけど吾郎さんの言葉で思いますことができた。
そういえば・・・。