第5章 だし巻き卵は母の味
白だしは万能調味料としてこのお店を支えてくれた。おひたしにも煮物にも何にでも合う調味料だ。もちろん、だし巻き卵焼きにも。
私はこの白だしをもっと江戸の庶民の皆んなに広めたいと思い、商品化したいと思っていた。そうすれば薄口醤油が忘れられることはないと思ったからだ。
しかし、白だしを大量に作ったとしても何の容器に入れて売り出せばいいのか?それなら、白だしのレシピを沢山巻き物に書いてお客さんに配ればいいのでは?と思った。この白だしのレシピの材料は江戸の庶民でも手に入りやすいものばかりだから作りやすいと思った。
そしてこの白だしのレシピを書いた巻き物はたちまち人気となって江戸の庶民の間に知れ渡った。
「皆さんに良いお知らせがあります。私は自家製の白だしという調味料を作り出しました。自家製というのは自分で作ったということです。この白だしの作り方を書いた巻き物をお店に置いておくので自由に持ち帰って作ってみてください。材料は皆さんでも手に入りやすいと思います。私は綾さんから薄口醤油の人気に陰りが落ちて売れていないと聞きました。薄口醤油だって立派な調味料です。これを活かすには白だしが1番です。白だしは何に使っても味が決まります。おひたしにもだし巻き卵にも使えるし、いつもはお味噌汁かもしれないけれど、鍋にお湯と白だしと具材を入れて煮詰めるだけで簡単にお吸い物という汁物も作ることができます。白だしは万能で優秀な調味料です。ぜひ、白だしを味わって頂き、皆さんの食卓に花を添えることでしょう!」
私の訴えにお店に来ていたお客さんから拍手が湧き起こった。私はみんなが賛同してくれてとても嬉しかった。こうして白だしの美味しさを伝えていった。