第1章 新米の季節
ある日、大学生の兄が久々に家に帰ってきた。兄は大学で心理学を学びながらラグビー部で汗を流している。自宅から通うのが困難なため男子寮に入って大学に通っているのだ。
「おいっす!」
兄は元気よく帰宅した。
「お兄ちゃんおかえりなさい。」
私や下の兄弟達が玄関で出迎えた。遅れて母と父もやってきて久しぶりに家族全員が揃った。
「これお土産な!」
兄がリビングルームでお土産の袋をテーブルに置いた。
「なになにー?」
下の兄弟達は大はしゃぎで袋の中を開けた。中には海苔の佃煮と茎わかめ、お煎餅が入っていた。
「うわぁ、すごい!お兄ちゃんありがとう。」
「凄いじゃない。」
「お土産ありがとうな!」
みんな口々にお礼を言ってソファーに座った。
そしてこの日の夕飯はとても賑やかになった。兄が久々に帰宅したとだけあって兄の好物が食卓に並んだ。母の作った卵焼き、味噌汁、炊き立てのご飯、油淋鶏、ほうれん草の胡麻和え、アスパラガスのベーコン巻き、鯖の味噌煮、そして唐揚げだ。
私ももちろん母の料理を手伝った。
「それでは手を合わせていただきまーす。」
みんなで手を合わせて料理を頬張った。