第2章 削り節おむすび(おかか味)
私がノートを差し出すと家康様がこれは何かね?と聞いてきた。
「実は私はもともと旅をしていまして私の故郷の品でございます。私が寺子屋にいた時に使っていたものでございまして、ここに家康様のお名前が欲しいのです。筆で構いませんので一筆いただけないでしょうか?」
「よかろう。では書いてやろう。筆を持ってこい!」
「へい、ただいまお持ちいたします。」
お供の方が筆を持ってくると家康様は名前を書いてくださった。
高校で使っていたノートなんて言ったらややこしくなるので寺子屋としておいたけど信用はしてくれたようだ。
「それで土地が欲しいと申していたな。どのくらいの広さの土地が欲しいのかね?何のお店をやろうとしているのかね?」
「はい、広さはまだ決めかねていますが私の大好きなお米を広めるべくおむすび屋をやろうと考えております。お米は庶民にとって大事な味ですし、どのご家庭でも毎日召し上がっています。またこの江戸では活気付いていて旅人も多く訪れるのではないかと考えました。そんな旅人に疲れを癒して頂きたく美味しいおむすびと一品を提供したいと考えております。」
私がハキハキとそう答えると家康様が土地の買い方を教えてくれた。
「ここでの土地の買い方は所有権の移転を示すために売人と五人組や名主が捺印した沽券を代金と引き換えで買主に交付し、売人が持っていた沽券には消印をして向こうにするのだよ。」
「なるほど。教えて頂きありがとうございます。」
私は頭を下げた。
「売買は名主の家で行われるのが一般的なので訪ねてみるのがいいかもしれんぞ。こんなにいい品を頂き感銘したのじゃ。私が名主と取り合ってみようかの。」
「いえ、そこまでなさらなくても・・・。」
私は丁寧にお断りしたが、家康様がどうしてもとおっしゃるので名主の方に伝えてくださることになった。
「明日はお店はやっているのかね?」
「はい、二日ほどお休みをいただいておりますが、後の日は開店しております。明日も開店しています。」
「それでは明日、店を訪ねた時に名主を紹介してやろう。」
「ありがとうございます。」
家康様からのお言葉は心に沁みてとても嬉しかった。城を出た私はウキウキしながら家に帰宅して行った。