第2章 削り節おむすび(おかか味)
「この歯ブラシと歯磨き粉を買っていこう!いくらかね?」
なっなんと徳川家康様が私の作った歯ブラシと歯磨き粉を買ってくださるというのだ。そのあとは頭の中が真っ白になり覚えていないが後から人伝で聞いた話によると家康様は歯ブラシと歯磨き粉を大層気に入ってくださり、歯磨き粉が無くなり次第にまた買いに行きたいと申して下さったのだ。なんてこの世は素晴らしいのかと私は感銘を受けた。本来なら徳川家康様のサインが欲しくねだりたい所だがそれはお供の方がお許しにならないだろう。
ああ、現代ならお写真も一緒に撮りたかったのになんて考えていた。そして後日、家康様のお供の方が私のお店に来られて褒美を与えたいからお城に来て頂きたいと言ってくれた。私は嬉しさのあまりに何度も頭を下げた。
そしてその日のうちにお城へと向かった。歴史の教科書や漫画、大河ドラマで見たあの世界に足を踏み入れることになるなんて夢にも思わなかったのだ。お城の門まで行くとさすがの豪華さと煌びやかさに圧倒されてしまった。
お供に案内され中に入る。
「失礼いたします。」
江戸の言葉はまだあまりわからないけどとりあえず敬語を使ってみた。
大広間に通されて奥に家康様が鎮座していらっしゃった。
「其方のお作りになった歯磨き粉と歯ブラシは実に見事な出来であった。」
家康様がそうおっしゃってくれた。
「喜んで頂きなによりでございます。」
私は正座して深々と頭を下げた。
「それで褒美を取らせたいと思うのだが何が欲しいのかね?贅沢な模様の着物かね?それとも豪華なかんざしかね?」
家康様にそう聞かれて私は迷った。
家康様のサインが欲しいなんて言ったら笑われるのだろうか?それに本当はまだ私の計画は途中なのだ。歯ブラシも作りたかったが本来は土地を買っておむすび屋をやろうとしていたのだ。だとしたら土地が欲しいと言えば土地を与えてくれるだろうか?いや、そこは自力で土地を買いたい。悩んだ末に私はこう答えた。
「家康様のお名前をこちらに書いてもらいたいのです。それとお聞きしたいことがございますがここでは土地はどのように購入すればいいのでしょうか?私は本来はお店を開きたくその資金集めに歯ブラシを作っていただけにございます。勿論、家康様が欲しいとなれば今後も歯ブラシと歯磨き粉は作り続けていきます。」