第2章 削り節おむすび(おかか味)
翌日も私は吾郎さんと御役所に向かった。
「失礼します。」
「また君かね。今度は何だい?」
御役所の人が呆れた顔で私に言った。
「あの唐突にすみませんが山で竹を切る場合はどこで許可を得たらいいのでしょうか?」
「なんでまたそんな話に?仕事は見つかったのかい?」
「まぁ、一応なんですけど。」
私はしどろもどろになりながら聞いた。
「何で竹を切る必要があるのかね?」
御役所の人が私に怪訝そうに聞いた。
「歯ブラシを作りたいと思いまして。これを見てください。」
私は自分の持ってきた歯ブラシを御役所の人に見せた。
「これは遠い異国の地で私が使っていた歯ブラシにございます。これと同じものは作れなくても似たものは作れると思ったんです。なので材料に竹がどうしても必要なんです。どこかで竹を切る場所はありませんか?」
私は必死に訴えかけた。
しかし、御役所の人は首を横に振りダメだと言った。
「竹を切ってどうやって作るつもりかね?」
「えっと、そこまでは考えてないんですけど。」
「それに異国の地と言ったが君はどこから来たのかね?どうせ旅人というのも嘘なんじゃろ?」
確かに正確に言うと旅人というのは嘘になるけど、草原を彷徨ってたんだしあながち間違ってはいない。
どこから来たのか・・・タイムスリップの話は吾郎さんと綾さんと私の三人だけの秘密になっている。だとすれば尚更、令和の世界から来たなんて知られたら・・・そんな場所は聞いたことないがどこにあるんだね?と聞かれて返事に困る。
どうしよう・・・でもここですぐに答えないと。
私の住んでいたのは東京都。そしてその昔の江戸に今私はいる。そんなことを言えば余計にややこしくなるし、返って御役所の人を混乱させてしまう。私は頭の中を必死にぐるぐる巡らせた。
こんな時、どんな風に答えたらいいんだろうか?