第2章 削り節おむすび(おかか味)
私は躊躇した。タイムスリップの話は吾郎さんと綾さんにしか話してないのでここで話すべきか悩んだ。しかし、ここで話した所で信じてもらえないし、逆に曲者扱いされても困ると思いその話は伏せることにした。
「えっと、私は旅のものなんですけど生きていくために小判が必要になりました。衣食住が欲しいんです。そのためにお店をやろうと考えてまして・・・まずは土地を買うところから始めようかと思いまして。そのためには働き口がないと小判がもらえないと思ったんですけど、どこか私のような女性でも働けるところはありませんか?」
怪しまれると思い旅の人と少し話を盛ることにした。まぁ、迷子で彷徨ってたんだしいいか。
御役所の人は腕を組み唸っていた。
「なるほどね。仕事は色々紹介してやれるがそこで働けるとは限らんぞ!おなごが働くなんざ聞いたことないし追い出されるんじゃないかね?でも旅のものなら見せ物でも何でもやればいいじゃないか。なぜそこまで衣食住にこだわるのかね?」
そしてやっと口を開いて申し訳なさそうに言った。
「私には今、家族がいないんです。助けてくれた人に世話にはなっていますがこのままお世話になり続けるわけには行きません。なんとか自立したいと思っています。よろしくお願いします。そこを何とか・・・あっ、ちなみにどんな仕事を紹介していただけるのでしょうか?」
私が必死に頼み込むと御役所の人が巻き物を広げて見せてきた。
「たとえば下駄の鼻緒の修理をする人とか小便仲間とかもあるし、獣屋さん、縁切り寺や・・・。」
せっかく仕事を紹介してくれても初めて聞く仕事ばかりでちんぷんかんぷんだ。
「あの、どんな仕事か詳しく教えていただけないでしょうか?」
「そんなことも知らんのかね?」
私が困り顔で聞くと御役所の人は呆れた顔をして教えてくれた。
「農作物の肥料をこさえるのに尿や便を売るんだよ。あとは獣の皮を売ったり、縁切り寺では離婚する人の手助けをする仕事だよ。あとはイモリ売りなんかもあるよ。イモリを使った惚れ薬を売るんだ。」
「へぇーあっいや、すごい仕事ですね。」
その後も令和では絶対に聞いたことのない仕事をあれこれ聞かされて正直、戸惑ってしまった。
雇ってくれる所があるにしても流石に仕事内容が癖が強すぎる。
どうしようやっていけるかな?