第12章 初めましてと秋刀魚の季節
私は色々と買い込んで吾郎さん達の家にやってきた。
「買い物行ってきました。台所をお借りしますね。」
私が元気よくそう言うと吾郎さんが私の買い物の包みを持ってくれた。
「穂乃果さん、悪いねぇ。あとで小判払っておくから。いくらがいいんだべ?」
「いや、別に・・・私が好きで言っただけですから、小判はいりません。」
吾郎さんの問いに私が丁寧に断ると"そんなの悪い"と首を横に振っていた。
「いえ、でも・・・わかりました。今回だけですからね。ちょくちょく、お料理を作りに行くと思いますけど小判とか気にしないでください。」
私は吾郎さんから小判をもらった。包みに入った小判がキラリと光った。
そのあとはせっせと台所で料理を始め、1時間後に料理が完成した。
「お待ちどうさんどす。吾郎さんの分も作りましたので、よかったら食べてくださいね。春菊のおひたし、枝豆のすりながし汁、ししゃもの炊き込みご飯おむすび、ほうれん草とチーズのキッシュ風です。キッシュは硬い生地の中に卵液と切ったほうれん草、チーズを入れて焼いたものになります。」
私の説明に頷きながら聞いてくれた。
この日はまだ夕方だったので早々に引き返そうとしたけど吾郎さん達からのお誘いで食べて行くことになった。
「今度こそ、俺に送らせてくれ!お店の前まで送ってやるよ。」
吾郎さんに言われた時にあの誘拐された時のことを思い出した私は頷いた。
「ありがとうございます。」
「綾もいいよな?」
「はい、穂乃果さん気をつけて帰ってくださいね!」
「わかりました。さぁ、食べてください。」
「いただきます。」
二人は手を合わせて私の作った食事を食べたり飲んだりしてくださった。
「綾さんには温めた牛乳も用意しました。飲むといいですよ。吾郎さんはお茶でいいですか?」
「いやー、何から何まで済まないねぇ。」
吾郎さんがそう言って屈託のない顔で笑った。
私もようやくご飯の時間。と思っていたら・・・。
ぎゃーん!と笑子ちゃんの泣き声が。
「お尻は濡れていませんか?それかお腹が空いてるのだと思います。」
私が慌てて言うと綾さんはお膳に箸を置いて笑子ちゃんの着物を脱がせて確認。
「お尻が濡れているわ。えっと布のオシメは?」
「綾、俺が替えてやるから母乳のマッサージを!」
二人のやり取りを見て微笑ましく思う。
この時代にもイクメンているんだなぁ。