第11章 秋祭りと新米の季節
「そういえば、ここの人達は秋になるとどんなことをして過ごすんですか?」
私は不思議に思い、続逸さんに聞いた。
「そうさなぁ。俳句を作る奴もいれば穂乃果さんが言ったみたいに書物を読む人もいるしあとは・・・秋の散策に出かけたりかな?食欲の秋も確かにあるのー。芸術の秋は初めて聞いたが。」
「なるほど。勉強になります。」
私は頷いた。
「そんで、穂乃果さんが前にいた所はどんな所じゃったのか是非聞きたいのぅ。」
「えっ?」
話の流れなのかそんなことを聞かれて驚いた私は後退りしようとしてしまった。
「・・・・。」
「どうした?過去のことを話すのがそんなに嫌なんか?俺たちの仲を何だと思っておるんや?そうか。俺の過去の話もしてないのに理不尽ってか。じゃあ、俺の過去の話もするさかいに。穂乃果さんの過去の話も聞かせておくんなまし。よいではないかー。恋人同士やし語り尽くそうや。」
続逸さんに肩をがっしり掴まれた私はそれを手で振り解いて言った。
「すみません、気分が悪くなったのでまたの機会にしてもらってもいいですか?」
「そりゃ悪いことしたわ。すまんな。じゃあ、お店まで送り届けるから。」
「ありがとうございます。」
本当は気分なんか悪くなかった。嘘ついたことは申し訳なかったが私のいた時代のことなんかペラペラ話すわけにはいかなかった。
そしてお店まで送ってもらいお礼を言って店のドアを閉めた。
バタンッ。
「ふぅー。危なかった。でも今度、同じことを聞かれたら何か話を取り繕わないと。でも嘘はつけないし何かこう・・・信じてくれるような嘘じゃない本当じゃない話を・・・。」
私は頭の中で考えを巡らせた。
それとも続逸さんには本当のことを話した方がいい?それなら吾郎さん達に話していいかどうか聞かないと。いや、続逸さんには申し訳ないけれどそんなこと話したら噂はあっという間に広がってしまうわ。
どうしたら・・・?疑問でいっぱいになった私の頭の中は更に疑問が重なるだけだった。