第9章 秋とラザニアの彩りと
暫くしたある日、源平さんからお返事の手紙が届き、近日中に秋祭りは実施できることになった。
そういえば、源平さんの家ってお母さんと息子さんの三人暮らしか。確か前に吾郎さんがお兄さんがいるとか言ってたっけ?ふむふむなるほどね。
さて、わくわくの始まりよ!秋の献立考えないとー。
「栗ご飯なんてどうでしゃろ?」
舞子ちゃんが嬉しそうに言う。
「いいわね。でもうちはおむすび屋さんだから栗のおむすびなんてどうかな?あとは秋刀魚の塩焼きにー。ねぇ、この時代って秋刀魚は普通に手に入るんでしょ?だって目黒の秋刀魚って話があるくらいなんだから。」
私は女子達にわくわくして聞いた。
「そりゃ、秋刀魚はありますけど目黒の秋刀魚とは何でしゃろか?」
好子ちゃんが私に聞いた。
「ええ?江戸の話じゃないの?詳しくは知らないけどお殿様のために料理番が豪華な鯛を買ってきて調理してあげたのね。でもお殿様はそれが不満で。秋刀魚が食べたいって言ったの。みんなは必死で止めたのよ。だって秋刀魚は庶民が食べるおいしくないものですよって。さて、お殿様は何で秋刀魚を知っていたと思う?」
「うーん。」
女子達が考え込んだ。
「家来から聞いたんじゃありません?」
舞子ちゃんが私に聞く。
「残念!他には?」
「風の噂とか?」
好子ちゃんが私に聞く。
「残念!正解はお殿様は家臣達の目を盗んで城下町に来ていたの。興味が湧いたから歩きたかったんですって。そしたら魚屋の前を通って知らない魚があるじゃない?これはなんじゃ?って聞いたら秋刀魚ですよって言われて。そりゃ食わず嫌いはよくないし、興味が湧いて食べたくなるわよね。それで家臣に秋刀魚を買ってもらって料理番に秋刀魚の塩焼きを作らせて食べたらこりゃもう、脂が乗ってて美味しいわで身がふっくらしてるわで虜になっちゃったんだって。だから、どんなに高級な魚でも目黒の秋刀魚には敵わないって話。わかった?」
「なるほどね。」
女子達が頷いて言った。
そして秋刀魚は魚屋さんで買えるとのことで試作も兼ねてみんなで秋刀魚の塩焼きを食べることにした。
「秋刀魚買ってきまーす!」
私の威勢のいい声に女子達の笑みも溢れていた。