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ぼんドズ

第1章 ぼんドズ


 簡単に言うと、やつは結婚した。
 俺は心から喜んだ。本当に嬉しかったから。想いが伝わるって本当に素晴らしいことだと思うから。と同時に、俺はフラれたという現実を受け入れないといけなかった。
 だが、俺は泣かなかった。俺自身も驚いたことだ。
 俺はそれでもいつも通りアイツとゲームをして、動画を撮った。俺のために笑うやつの声が嬉しかった。だから、胸の奥にくる小さな痛みくらい、無視することが出来たんだ。
 それでも時々自分の中の悪魔が囁いて、やつの奥さんを奪えば、なんて考えたこともあった。だが、それはやめた。それをしたら、やつはきっと悲しむし、俺とも関わらなくなるかもしれないから。
 それからは、嫉妬も悲しい気持ちも乗り越えて、今日も明日も変わらず動画を撮り続ける。
 それでも、振り向けば、一人ではどうしようもない愛が転がっていて、本当は、本当はパンクしそうだった。
「ぼんさん、何してるんですか」
 ドズルが声を掛けてきた。俺は机の紙を急いでぐしゃぐしゃにして振り返った。
「絵を描いていたんだよね」
 と言えば、なんで急に描いているのかとドズルは大声で笑った。
「ほら、これ何に見える?」
 俺は紙を裏返した。そこにはあらかじめ裏に書いてあった犬の絵をドズルに見せると、またやつが笑った。
「これって……あの時の犬ドラゴンですか?」
「違う違う、犬だから!」
 ドズルはまた笑った。本当にこの人はよく笑うから、俺もつい笑ってしまう。ここに綴った想いはあとでまた燃やすことにしよう。これは、誰にも、特にアナタには知られてはいけないことなのだから
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