第1章 ぼんドズ
たまたま声を掛けたように見えていたって、本当は計算された策略だったら?
そんなことをこんな俺が今更言っても、ドズルははっはっはっと笑うだけだろう。どうしたんですか、ぼんさん。なんて言いながら。
愛が手に入らないのは散々痛感してきた。いや、一人だけしか経験がないのだが。それも、青春と呼ぶにはまだまだ浅かったあの時代に。
いや、今はそんなことはどうでもいい。俺が今言いたいのは、気づいた時にはドズルに惹かれいていた、ということだった。
あれが、いつだったのか。忘れっぽい俺が思い出すことは出来ないが、あの声、話し方、繊細な動き。俺はそんな彼の全てを、愛してしまっていたんだ。
いや、俺だって最初は受け入れられなかった。この歳になって、なんて言うと俺と同世代の人に失礼なのだが、こんなに心が揺れ動くとは思ってもいなかったし、ましてやドズルは男で、俺も男だ。そういう好みだったなんて、俺自身驚きの事実だったんだ。
だけど、一緒に動画を撮ったりしている内に、それは否定出来ないものになっていて。同時に、ドズルは男が好きではないと分かっていくばかりで。