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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第14章 鋼の錬金術師







アルはオレの身体に気を遣ったのか、すぐに部屋を出ようとした。
その背中にオレは声を掛ける。

「アル」
「なに、兄さん」

夢の中のアルと目の前のアルが重なる。
まっすぐにオレを見つめ、何か言っている。

オレに何を言おうとしているんだ。
オレに何か言いたいことがあるんじゃないか。

そう聞きたかったけど、オレの言葉はアルに届かず宙を舞う。
オレはバカか。
夢の中の話じゃないか。
現実のアルに聞いてどうする。

「いや、なんでもない。悪い」

アルは少し不思議そうにしていたけど、そのまま部屋を出ていった。
ガシャン、ガシャン、と鎧の音が遠のいていく。
生身の身体の時には絶対に出ない音。
アイツの足音は軽くて、子ねこが走り回る音に似ていたのに。

魂だけの身体は、とても不便なはずなのに。
あいつは泣きごと一つすら零さない。
それがあいつの強さなんだろう。
けど、もしも…………。

「エド、準備はいいかい?」

はっと我に返った。
部屋にばっちゃんとウィンリィがいて、もう手術の時間なんだと気づいた。

腕を手術した時と同じで、目はタオルで覆われ真っ暗になる。
自然と身体が強張り、左腕がシーツをぎゅっと強く握りしめていた。

瞬間、あの痛みが。
電気のように身体中に襲い始める。
冷や汗が全身から吹き出す。
朦朧とする意識の中、ずっとオレはアルの名前を呼び続け、ずっと謝り続けていた。

ようやく手術が終わるころにはオレの体力は限界を迎えていた。
熱でうなされ、今、起きているのか寝ているのかすらわからない。






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