第1章 三人の錬金術師
彼女にとってレト神は、コーネロは、文字通り彼女の全てで、立ち上がるための足だった。
その支えを失くし、どうやって立ち上がればいいのか分からないと涙を流す少女にエドワードくんは静かに言葉を投げる。
「そんな事、自分で考えろ」
突き放すような言い方だった。
「立って歩け。前へ進め。あんたには、立派な足がついているじゃないか」
冷たいように聞こえるが、それはエドワードくんなりの優しさなんだと気づいた。
今は立てなくてもいい。
今はまだ何かに縋っていてもいい。
だけど、何時かは何かに縋って生きるのではなく、自分の力で、自分の足でちゃんと立って、前に進んでいけばいい。
人間はとても弱くて、すぐに挫けて転んで倒れてしまう。
だけど、同時に強くもある。
挫けて転んで倒れても何度でも立ち上がることができる。
時間がかかってもいい、ロゼさんがちゃんと自分の足で立って歩けるよう、小さな祈りを送ろう。