第12章 それぞれの行く先
「……わかった。呼び出してすまなかったな。もう行っていいぞ」
「はっ」
再び敬礼した彼は背中を向けて歩き出したが、ふとその足を止めると、数日前までエルリック兄弟が滞在していたと言った。
「"エルリック兄弟"が?」
「そう。エルリック兄弟です」
「彼らの"探し物"はみつかったのかね?」
「いいえ。なにしろその探し物は伝説級の代物ですので」
「そうか、ありがとう」
小さく笑みをこぼして私は少佐に礼を言った。
まったく、お人好しだな少佐は。
「ヒューズを殺害したと思われる"者達"」と彼は言った。
という事は相手は複数であることが分かる。
もしかすると組織として動いている者たちかもしれない。
そして、「大佐である私の命令であろうと言う訳にはいかない」という事は、私以上の地位の者が少佐に口止めしているという事……。
軍上層部がらみと考えていいだろう。
そして「エルリック兄弟の探し物」、すなわち賢者の石だ。
「軍上層部にかかわる組織と賢者の石とヒューズ中佐……。いったいどんなつながりが……」
「さぁな。私にもさっぱりだ」
中尉の疑問はもっともだ。
それが分かればすぐにでも犯人を捕らえることができるが。
「もうじき私はセントラルに異動になる」
「あら、おめでとうございます」
「渡りに船とはこの事だ。上層部を探ってヒューズを殺した奴を必ずいぶり出してやる」
「公私混同とは貴方らしくないですね」
「"公"も"私"もあるものか。大総統の地位をもらうのもヒューズの仇を討つのも全て私一個人の意思だ!上層部に喰らい付くぞ。付いて来るか?」
中尉にそう尋ねれば即答で「何を今更」とまっすぐな瞳で応えた。
このままなにもせずにのうのうとできるものか。
私はこの手で犯人を捕まえ、そして―――。