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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第10章 【外伝】軍部祭り





「すまないな、」

私に気が付いた大佐が眉尻を下げて本当に申し訳なさそうに謝るから、文句の一つでも言ってやろうかと思ったけど何も言えなかった。
捨てられた犬みたいな顔で私を見るのをやめて欲しい。

「エドワードくんに勝ったとお聞きしました」
「まあな。戦い方が直線的すぎてまだまだ子供だったよ」
「そうですか。なら、もう少し手加減するということも覚えていただきたいものですね」
「………もしかして君、怒っているのか?」
「まさか。この後、リザさんとご飯でも行こうかなって思っていただけで、それが白紙になっただけです。予定が狂う事なんて職業柄、今にはじまったことではありませんから」
「……………本当にすまない」
「ふふ、許しません。今度、ご飯奢ってくださるのであれば許します」

くすくすと笑えば、大佐も少し笑顔を見せた。
練兵場の後片付けは4日後には全て元通りになり、私は約束通り大佐にご飯を奢ってもらった。
気になっていたシーフードレストランでの食事は、最高の時間を過ごす事ができた。

後日。
東方司令部では、新たな話で盛り上がっていた。

「今度アールシャナ中尉と鋼ので勝負してほしいな」
「大佐には負けたが、女となれば流石に鋼のが勝つんじゃないのか」
「いいや、中尉だろ。ああ見えて戦闘センスはかなりのものだと聞いたぞ」
「対戦カード誰か作らないかな」

あんな大惨事があったというのに、どうして彼らは学ばないのだろう。
同じ過ちを何度くり返せば彼らは懲りると言うのか。

「、大総統から電話が……」
「絶対に嫌です。お断りします」
「だそうです、大総統閣下」

きっぱりと断り、私はいつものように仕事に専念をする。
騒がしくもない平和な時間が流れる。
こんな穏やかな日々が一生続けばいいのに。
そんな思いを抱きながら、私は一つ大きく伸びをした。




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