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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第8章 賢者の石







「なっ……何事ですか⁉」

大きな物音に外で待機していたブロッシュ軍曹とロス少尉が、慌てた様子で部屋の中へと入って来た。
どうやら喧嘩だと思ったらしいが、そうだとしたらどれだけよかったか。

「解けたんですよ」
「え?」
「暗号が、解けたんです」
「本当ですか⁉良かったじゃないですか!!」
「良い事あるか畜生!!」

暗号を解こうと奮闘していた私達を長い事見守っていた彼らだから素直にそう思ったのだろう。
私も何も知らなければ軍曹と同じことを口にしていたかもしれない。
だけど、知ってしまったら"よかった"なんて思えない。
いつもなら八つ当たりするエドワードくんに注意をするところだが、そんな余裕なんて私には無かった。

「"悪魔の研究"とはよく言ったもんだ。恨むぜ、マルコーさんよ……!」
「……いったい何が?」

床に座り込み額を抑えるエドワードくん。
椅子に座り項垂れるアルフォンスくん。
拳を握り締める私の三人の姿に、流石に様子が変だと思った彼らは静かに口を開いた。
本来であれば、無関係な彼らを巻き込むわけにはいかない。
頭ではわかっているのに、今の私の頭の中は別のことでいっぱいで。

「賢者の石の材料は………生きた人間だ!!」

自分に都合のいい考え方をして、すべてのことをないがしろにした。



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