第7章 家族の待つ家
次の日。
朝早くに私達は中央に行くための準備をしていた。
見送りしてくれたのはピナコさんだけで、ウィンリィさんの姿は見えない。
どうやら徹夜続きだったため、まだぐっすりと寝ているらしい。
「じゃあな」
「ああ。気を付けて行っといで。ボウズども、たまにはご飯を食べに帰っておいでよ」
「うん、そのうちまた」
「こんな山奥にメシ食うだけに来いってか」
その言葉に私と少佐は小さく笑みを零す。
「なんだよ」
「迎えてくれる家族……。帰るべき場所があるというのは幸せな事だな」
「へっ。オレたちゃ旅から旅への根無し草だよ」
どこまでも強がるエドワードくん。
彼自身、気付いているのかもしれないけど、認められない認めたくない何かがあるのかもしれない。
生まれ育った家でなくても彼らの帰りを待っている人がいることがどれだけ幸せで嬉しい事か。
「エド!アル!」
その時、ウィンリィさんの声が聞こえた。
振り向くと、まだ眠そうな顔をしたウィンリィさんが2階のベランダから手を振っている。
「いってらっさい」
無事に帰って来てほしいという意味が込められている言葉。
たったその一言だけで、気持ちが前向きになれるのはどうしてだろう。
エドワードくんも私と同じ気持ちになったのかどうかは分からないが、彼は軽く息を吐いて頭を掻いた。
そして「おう!」とだけ応えて彼女に背を向けて歩き出した。
「本当にありがとうございましたー!!」
「さーん!!また来てねー!!」
大きく手を振って、リゼンブールを、ロックベル家を後にした。