第7章 家族の待つ家
――・アールシャナside――
マルコーさんと別れ、汽車に乗ってから数時間。
漸く目的地であるリゼンブールへと到着した。
汽車から降りて、大きく伸びをし新鮮な空気を吸い込んだ。
土と干し草に混じる微かな家畜の匂い。
東方司令部では感じられない澄んだ空気が肺の中に入り込み、気持ちがいい。
なんだろう、すごく懐かしい気持ちになる。
まるで、「おかえり」と言われているような……。
駅から少し歩いた場所、丘の向こうにその家はあった。
玄関先で一人の女性が腰に手を当てて彼らの帰りを待ってくれている。
それだけで彼らの関係がとても深く家族なんだといっているようで、胸のあたりがきゅうっとなる。
「こっちアームストロング少佐。こっちが」
「ピナコ・ロックベルだよ」
ピナコさんに手を差し出すと「久しぶりじゃないか」と優しく微笑み私の手を優しく握った。
私もまた「お久し振りです」と小さく皺だらけの綺麗な手を握り返した。
軽い挨拶を終えたあと、ピナコさんは少佐をじっと見つめ、エドワードくんをまじまじと見つめ「エドはちっさくなったねぇ」と呟いた。
私はともかく、対象物が少佐であれば誰でも小さく見えるのではないだろうか。
コンプレックスである身長を指摘され、言い返すエドワードくん。
それに対して言い返すピナコさん。
2人の口喧嘩をただただ見守るしかない私達。
はたしてこの口喧嘩に決着はつくのだろうか。