第4章 状況をきちんと把握しよう。
どうしようか、と指で眉間を揉んでいると、今度はメインマストの見張り台で見張り担当になっていたクルーが騒ぎ出す。それを聞きつけた一般クルーやオレと他の隊長達、オヤジも其方を見上げてみれば確かに何かが飛んでくる。
それは白い綿毛の様な羽を持つ2mほどの青い鳥で、人間を乗せてもなお安定した飛行を見せる。人間の方は黄色に白いメッシュのセミロングの髪、服装は上半身がおへその見える大胆な白い半袖Tシャツ、ズボンはカジュアルなゴム裾の茶色いロング丈パンツ。その人間はオレ達にとって、見覚えがある女の子だった……。
少女はモビーの電々虫が時々配信を受け取っていた、別世界にいる筈のオヤジの実の孫……。隣に立っていたオヤジが目を見開いてハッと息を呑み、オレ達も全員唖然となってモビーの上空を飛んでクジラの様な生き物に近づく姿を見つめる。ずっと肉眼で見る事はないと思っていた光景が、会えないと思っていた少女がいま、目の前に現れたんだ……。
「グラララ……グララララッ!!」思わぬ人物との遭遇に固まっていたオヤジが、突然高らかに笑い出す。すると他の家族達も次第に賑やかになっていき、「お、オヤジの孫だ……」「姪っ子だ……」「オレらっておじさんなんだなぁ……」「20代なのに一気に老けた感」などなど彼方此方で喋っている。
「はいはーい、ホエルオーちょっと待とう!」
オヤジの孫娘が空から海洋生物へ声を張り上げる。鯨に似た生き物はホエルオーというポケモンらしい。ホエルオーは途端に鳴き止み、自分に話しかける少女を見上げている。
「とっても情熱的なアプローチ中にごめんね、だけどよく見てごらん?上にいっぱい人がいて、旗が立ってて、全体的にちょっと違うと思わないかな?」
敢えて確認させる様な言い回しは直情的なホエルオーを刺激させない為だろう。そんな少女の口調に促されるようにホエルオーの視線はまずオレ達に、次いでメインマストの海賊旗へ。そこからじっくり白モビー全体を観察し、今度は随伴しているミニ(比較してミニなだけで小型とは言わない)モビーを見回した。ホエルオーは徐々に両目を見開き、ポカーンと大口を開けていく。唖然。
「……」
「……ショックだろうけど、これは立派な船なんだ」
「ぼっ………ぼぇぇぇえええええええっ!!!!」
「「なんかごめん」」
