第3章 運命は須くハリケーン
手配書の顔と昔話しか知らない祖父と、祖父母が迎えた血の繋がらない家族達……。文字通り次元を超えなきゃ会えない果てなく遠い家族の存在は、最早いないも同然なのでちょっぴり寂しく思っていた。故に冒険こそがシフォンの、ポケモン達の強い生き甲斐となっている。
閑話休題(それはともかく)。
今回、島を襲った大嵐はシフォンが今まで生活して来た中で、冒険で見て来た中で一番に不可解な出来事だった。ポケモン達の本能的直感とシフォンの気象予報で予兆に気づけたのは幸いだったが、流石に常識外れた島とは言っても天気の変化が急すぎる……。まして島の上空を覆った暗雲はまるでウルトラホールのような渦を巻き、上空からあっという間に海面に降下しながら島全体を覆い隠したのだ。
「……ちょっとなに?なんなのコレ?!」
【マスターこれはただの嵐じゃないロト!!】
「そんなの見れば分かるって……!!」
避難した野生のポケモン達を巨大なシェルターの中に入れ、ゲットした子達はモンスターボールに戻して手持ちとボックスへ。そしてすぐに自分も家へ避難したのは良いが、窓から見える異常事態に隣で宙を舞うスマホロトムと大混乱。お互い訳が分からないから涙目になって右往左往、どうしようどうしようと慌ててもう一度外に目を向けた時、上空を飛翔するポケモンと何故かこの荒ぶった海を力強く泳ぐポケモンを発見……。
空間を司るシンオウのポケモン・パルキアと、海を総べるホウエンの伝説・カイオーガだ。
「(……うっっわ待って!!何かそれぞれ別地方で体験したことがある展開なんだけど?!と言うか、アレ?!おばあちゃんはたしか、たしか…)」
かつて祖母は昔話の序盤にこう語った、「パルキアとカイオーガが揃ったこの島に平穏はない」と。かつてディアルガと喧嘩になって一つの街を消滅させかけたパルキア、その場にいるだけで豪雨を降らせる特性持ちのカイオーガ。そもそも二体は別地方で、現世におらず、接触する事など本来はあり得ないポケモン達だ。と言うか、同じ地方であっても伝説ポケモン達は緊急事態でも無い限り集結しない。そしてシフォンが覚えてる限りは、野生?だろうと捕獲した子だろうと、島に別の伝説ポケモンと一緒に訪れる伝説ポケモンもいなかった。
「……ウソでしょ?!!私達どうなっちゃうのぉぉぉ?!」
