第2章 三人称視点の秘密
「おんりーってさ、モテるよね」
「え?」
おらふくんのチャンネル用に撮影を終えた後だった。雑談のように通話を繋げていると、ふとした拍子におらふくんがそう言った。
「急に、どうしたの?」
俺が訊いてみると、だってコメントとかファンアートとかすごいやん、とおらふくんが返してきた。
それは君にだって同じことを言えるのに、急にどうしたんだろうか。何か悩んでいるのなら、少しは聞いた方がいいかもしれない、と俺は黙っておらふくんの言葉を待った。
「俺、時々何喋ってどう動いたらいいか分からんのよね」
とおらふくんが話す。いや、俺よりよく喋ってるしよく笑ってるよ、と言えば、あれはみんなが面白いからだ、と返される。
「だから、なんか撮影してる時に気をつけてることとかあるんやないかと思って」
「あー……」
確かに、オープニングやエンディングの時は喋らないようにしてるよ、と言うと、ほら、そういうところを知りたいんだとおらふくんは話を続けた。
「他に気をつけてることはなんなん?」
「他にって言っても……」
自分が無意識にやっていることを、誰かに伝えるのは難しいかもしれない。あまり自分のことは気にしたことがないし。
こういう時は、おらふくんがゲーム内でいつもどういう動きをしているだろう、と考えてみる。そういえば、おらふくん、前に俺が後ろにいても気づかずどこか行っちゃったことあったな……。