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私が嫌いな私なんて○したっていいじゃないか(短編集)

第12章 始まりの話


はじめは例のネット配信の動画だった。そういうのをちょこちょこ見て、何か可能性を感じたら直接連絡することも私の仕事だったから


黒髪で、上手いとは言い難いメイクと撮影に気を遣えてない暗い照明




けど歌はとてつもなく上手かった。ギターを片手にひっそりと生きている彼女と数字に私は途轍もない憤りを感じた。


もっと彼女は評価されるべき才能を持っている。写りがもっと良くなれば、彼女の数字はグンと上がるのに



もしかしたら、彼女はこの事務所の救世主になるかもしれない








彼女とは連絡をして直接話すことにした。初めは意外にも彼女は乗り気じゃなかった



『そんなことしたって何になるんですか。私は有名になりたい訳じゃない』


「じゃあどうして配信なんてツールを使おうと思ったの?今じゃSNSが主流の時代。お金のない子供が事務所所属以外で名を挙げるにはそれが一番最適な方法じゃない」

『…煩いですよ。貴方にそんな理由を教える義理はありません。大体、何で私にしつこくフォーカスしてくるんですか。同じような別の人はいっぱいいるでしょう』



「……

貴方が…

クソガキだからよ」


『…!?』


「他者から認められたいっていう劣等感の塊。思春期特有のオーラがプンプンしてる」

『ッ…』

「そして私もまた、

クソガキだから」

『…どういう…』

「私は昔から回りの空気が読めなくてね。何で無理だって思うんだろうとか私だったらもっと上手くやるのにとか、反発する気持ちは今も治ってない。それで無名の事務所の関係者になったっていう成れの果てよ

でも、同じ奴がいれば何か起こる気がする。

革命よ。

あんたみたいなクソガキを支える為に、デカくする為に私は生きてんの」



『………


別の誰かになりたかった』

「?」

『私は優等生で、勝手に期待されて…都合のいい奴だって思われてるから。別の何かに変われたら、何かが変わる気がしてたから…』

「言うねぇ。じゃあシナリオは復讐劇だ」

『そんな大げさな…』

「否定はしないんだ。
いいよ、とにかく今はバレたくないんでしょ?

自分に価値がないと思えば自分から作ってしまえばいい」

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