第1章 再演
正確な日時は記憶していなかったが、タイムリープしたその先には見覚えがあった。
急いで携帯を開き時間を確認する。
ただ、それが正しい事なのか把握しておきたかったのが本音だ。
この場所をぐるぐると駆け回って建物の構図やその辺り一帯を頭の中でマッピングしていく。
すると、鉄の階段を駆け上がる足音が聞こえた。
ここまでの時間を確認する為に携帯を開く。
ーー5分…ーー
階段を駆け上がる音が鳴り止む頃に響く銃声。
そして、私の視界は暗くなり
手の平から冷たいざらつく地面を感じ取った。
1章 ー 再演 ー
replay
目覚めた時には、左腕にバングルを嵌めていた。
念の為に右手で携帯の時刻を確認し、急いで上階に向けてワイヤーを伸ばし、彼等がいるだろう場所まで自分の身体を浮かせ、その縁に登った。
「!…誰だ」
額に突き付けられた銃口を鷲掴みにして銃を向けた人を一旦無視。
その場所の配置確認をしながらパーカーのフードを深く被り直す。
階段の上がりきった場所がこの位置からでは確認できない事。
どういう訳か1人は地面で座り込んでいる事。
リボルバーを胸に当てている事。
ジャケットを着ている事。
インナーにシャツを着ている事。
それぞれの距離感を記憶していると腕を掴まれ引っ張られる。
ーーしまった…ーー
そう思った時には私の視界は暗転し、今度は携帯で時間を確認も、足音も聞く事ができ無かった事を悔やんだ。
手の平から冷たいざらつく地面を感じる。
こうして私はまた“戻った”事を知る。
身体を起こし、フードを深く被りながら建物の間で身を潜める。
片手でアンクレットから短剣を解除。
携帯の時間を確認しながら物陰に隠れ、目的の人物が通り過ぎる時間を確認した。
彼が通って直ぐにワイヤーを発射させる。
今度はさっきと違い、建物の上からその様子を見る。
そして上階に居た2人の間に短剣を投げ突き刺した。
「!…誰だ」
思う位置にピタリと狙えた為直ぐに身を隠した。
直後、銃声が響く。
そしてまた……
タイムリープとは名ばかりで実際はこういう事の積み重ねだ。
それでもやっていなければ何の成果もあげられない。
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