第11章 エキドナのまじない
「いやいやいや!そんなおまじない、
いらないよ!」
「何!?主様は女人なら喜ぶと言って
いたはずだが…」
「私には、ちゃんと心に決めた人がいるから
大丈夫なの。誰でも寄ってくるのは困るよ」
「それはそれは…余計な事をしたな。
女人なら誰でも喜ぶと聞いたのでな…」
シュンとピピの頭が項垂れる。
「このおまじないはどうやったら
解けるの?」
「それは……主……エキドナ様…
じゃないとわからぬ」
「ええええぇ!そんな…ご主人様は
ここのすぐ近くにいるの?」
「あぁ、この先のドラク村の手前に
ある草原と沼地が広がるシェスト草原に
居を構えておる」
「ドラク村…次に行く村の手前なら
良かった。ねぇ、こんなおまじない
他の誰かにもかけたりした?」
「いや、私の姿を見ると皆寄って
来ぬか去って行くからな。助けようと
するなんてお主くらいのものじゃ」
「それは…褒められてるのかな?
まぁ、どっちにしろ、このおまじないは
誰にも使っちゃダメだからね」
「あぁ、心得た。まじないが効いておる。
気をつけて帰るが良い」
そう言い残しピピは建物の
隙間に消えていった。
「さて、おまじないってどの程度のもの
なのかな?大した事なければ
いいんだけど…」
ビクビクしながら周りを警戒して
宿に戻る。
途中、下賤な輩からニタニタした
目で見られたり、近づいてくる者も
いたが、振り返らずさっさと宿に
戻ってきた。
1階の食堂に何人か泊まる客が見えたが
2階の今日泊まる部屋に直行する。
ふぅーと一息つき、買ってきた荷物の
整理をする。
そこにコンコンとノック音が響く。
「姐さーん。頼まれてたの持って
きましたー」
馬車に一緒に乗ってきた三人組だ。
「あ、ありがとう!」
雑貨屋に行くという三人に買い物を
頼んでいたのだ。
母に旅先から手紙を送ろうと思い
レターセットをお願いしていた。
つい、まじないの事を忘れ扉を
開けてしまった。
レターセットを受け取ろうと伸ばした
手首をガシッと掴まれた。
レターセットは落ちて床に散らばる。
ハッとして顔を見上げると
グイッと手首を強く引かれ部屋の
ベッドに押し倒された。