第11章 エキドナのまじない
誰も人の姿は見えないのに
積み重なった木箱の下から
物音が聞こえる。
何だろうと木箱の下を覗いてみると
ヘビがいて尻尾の先が木箱の下敷きに
なって動けないでいた。
「大丈夫!?今助けるからね!」
必死に藻搔いていたヘビはルシアリアを
見て最初は驚いたものの木箱を
退かす姿を見ると大人しく動ける
ようになるのを待っていた。
木箱を退かすとヘビの尻尾は少し
潰れたようになっていた。
「わ~大丈夫?今治すからね」
治癒の魔法をかけると潰れていたのが
嘘のように元に戻った。
「これでもう大丈夫。気をつけてね」
その場を去ろうとすると後ろから声が
聞こえてきた。
「礼を言う。人間にもお主のように
心優しい者がいるのだな」
「え?」
振り返ると先程助けたヘビが喋っていた。
「私はピピ。エキドナ様の眷属である。
そこらのヘビと一緒にするなよ?」
ヘビが喋ったのに驚いた。最初に声が
聞こえたのは気のせいでは
なかったようだ。
(エキドナって確か、上半身が女の人で
下半身がヘビの魔物って聞いた事がある)
「どうしてこんな所にいたの?」
「それは…ちょっと木箱で昼寝をしていた
つもりが運ばれてここに投げ出された時に
箱の下敷きになってしまい動けなくなって
しまったのだ。何人かに見つかったが
驚いて逃げる者達ばかりだった。
お主のおかげで助かった。お礼に
以前、主から人間の女人なら喜ぶと
聞いたまじないをかけてやろう」
「え?いやいやお礼なんて気にしないで!」
「それだと私の気が済まん。受け取れ」
そう言うと尻尾の先を回して何か呪文を
唱える。
ルシアリアの体の回りを一瞬火花が散り
左手の甲に光が集まってすぐ消える。
「あの…これ何のおまじないなの?」
左手の甲を見るとバラの花のような
模様が光って浮かび上がっている。
「あぁ、説明してなかったな。
誘淫の印と言って、どんな
男も虜にするまじないだ。その印が
ある間は子は宿さぬが何度でも行為が
できて女人には嬉しいまじない
なのであろう?」
得意げに話すピピにルシアリアは
一気に青褪めた。