第9章 事後報告と勇者の憂鬱
急かせかと町を出た二人。
村の方向に歩いていき道に人が
少なくなってからルシアリアは
ゴソゴソと串焼き屋で買った串を
一本はフォルトに渡し
もう一本は自分用に取り出した。
「お昼過ぎたからお腹空いたね。
美味しそうだったから一緒に
食べようと思ってたくさん買ったの」
「先に食べてて良かったのに…」
「フォルトと一緒に食べたかったの!」
そう言って串焼きに食いつくルシアリアは
とっても幸せそうな顔をしている。
「本当はもっと町を
見て回りたかったんじゃないか?」
「ううん。私は待ってる間、いろいろ
見て回れたから満足したよ。
はっ!
もしかして急いで出てきちゃったけど
フォルトも何か見たかった?」
「いや、そうじゃないけど……
ルアが楽しめたならなら良かった。
でも……本当はこんなつもりじゃなかった」
村に帰る田舎道を串焼きを食べながら
二人でとぼとぼ歩く。
フォルトはいつもより疲れた顔を
している。
他の人が見てもただの無表情のようだが
ルシアリアはフォルトが何か
思い詰めているのがわかったので
フォルトが話し出して
くれるのをゆっくり待った。
「…魔王を倒したら平和になって
ルアも安心して暮らせるし
みんな幸せになれると思ってたんだ。
でも、実際は魔物はやっぱり襲って
くるのはいるし、人は俺を奉って
いろんな奴が寄ってくるし
ギルドの依頼も増えて
ルアとゆっくりする時間も
削られてきて…何の為に魔王を
倒したのかわかんなくなってきた。
俺はただルアと平和にゆっくり
過ごしたいだけなのに…」
ここ最近忙しい日々で不満が
フォルトの中で積もり積もって
きていた。
「……うん。…そうだよね。
でも平和にちゃんと近づいてきてると
思うの!人狼族との和平だって
フォルトが魔王討伐してなきゃ
そんな話さえ出なかったかも
しれないもの!今から少しずつ
変わってくるんだよ!
まだこれからなんだよ!」