第6章 人狼族との出会い(前編)
(そういえば神父様が最近人狼族が
出るから気をつけろって言ってたよね。
人狼族は気が高ぶると変身するって
…本当に人狼族…?)
ここの周りには騒ぎを聞きつけて
たくさんの人が集まってきていた。
人狼族だとわかると大騒ぎになるのでは
と思い相手が怒ってるのはわかっていたが
ルシアリアは両手を伸ばし耳を隠す。
「なっ、何するんだ!」
「あの私、変な事してる自覚は
あるんですが、ちょっと落ち着いたら
離れますので!」
その言葉にハッとしてレクトは黙る。
落ち着いてきたのかルシアリアの手の中の
耳が引っ込んでいく。
そっと手を離すと狼の耳はなくなっていた。
幸いな事にルシアリア以外はその耳に
気づかなかった。
「悪かったな」
レクトは落ち着いてバツが悪そうに
謝ってきた。
「いえいえ!ご兄弟ですか?
喧嘩はいいですが怪我がない
くらいにしてくださいね」
「…あぁ」
「ちょっとこっちに来い」
リヒターは人が集まってきたのを
気にしてルシアリアとレクトを
人が少ない路地に連れて行く。
「あんた…」
「ルシアリアです」
リヒターはその場の勢いで求婚した
もののまだ名前も知らない事に気付くと
ルシアリアが名乗る。
「ルシアリア、俺達が恐くないのか?」
「そうですね。恐くないです」
二人を見るが、さっきの耳を見てないと
人間としか思えない。
体格のいい強面の二人組という感じである。
人に攻撃してくるようにも見えないので
変に怯えることはない。
だが、レクトはその言葉が信じられない
という顔をしているのがわかった。
「えと最初、恐いかなと思ったんですが
お耳…かわいかったです!いえ!
こんな事言ったら失礼ですね。
かっ、かっこよかったです!」
怯える様子もなく一生懸命に話すルシアリアに
面食らい肩の力が抜ける兄弟二人。
「ふっ、どっちも表現そんなに
変わらないだろ」
「おまえみたいな人間もいるんだな」
変な物を見るようにレクトが呟く。
「それより、見つかったら大変
なんじゃないですか?
どうしてこんな所に…」
「今、人狼族は人間達と和平するか
どうかの瀬戸際でな…
人間達の様子を見にきたんだよ」