第5章 上書き
まだ朝早く人の少ない中、フォルトは
ルシアリアを抱えて自分の家に帰る。
「どうしてフォルトの家?
うちすぐそこ…」
「ごめん。俺が我慢できない。
大丈夫。おばさんにはルアが
無事に帰ってきた事を
母さんに伝えてもらうから」
フォルトの家に着くと
フォルトの部屋に連れて来られ
ベッドに降ろされる。
「お風呂沸かして、
母さんに伝えてくるから
ここで待ってて」
そう言ってフォルトは部屋を出て行った。
久しぶりにフォルトの部屋に入った。
帰ってきたばかりで5年前と何も
変わっていない。
机の上に小さい頃に撮った写真が懐かしい。
思い出に浸りそうなところですぐ
フォルトが手にサンドイッチが
のった皿を抱えて戻ってきた。
「作り置きがあったから持ってきた。
お腹空いただろ?一緒に食べよう」
「おばさん、こんな朝早くにお邪魔して
怒ってなかった?」
「なんで?ルアを助けて
エラいとは褒められたけど。
ルアの母さんに伝えてくるって
さっさと出て行ったよ。
……ニヤニヤしながら」
「ニヤニヤしながら…って、なんで!」
「………さぁ?…ほら、
早く食べて風呂に入るぞ」
「う、うん」
何か誤魔化されたような気も
しないでもないが
美味しいサンドイッチに
何を気に掛けてたかも忘れてしまう。
サンドイッチを食べ終わると
またフォルトがルシアリアを
抱きかかえる。
「わっ、もうご飯も食べたから
自分で歩けるよ!」
「すぐそこだから」
何を言っても降ろしてもらえなさそうなので
フォルトのご行為に甘えて脱衣所まで
連れて行ってもらう。
「ありがとう…ってフォルト?」
「ん?」
「どうしてフォルトも服脱いでるの?」
「俺も入るから」
それがどうしたと当然のように答える。
「一緒に?」
「一緒に」
「………」
小さい頃は一緒にお風呂に入ったが、
10年以上前の話である。
どうやって回避しようか迷うルシアリア。